曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

金光瑶の願い(曦臣の崩壊から再生へ)

藍曦臣がそれまで信じて来た、守ろうとして来た世界は、観音廟で、
崩壊したのだろう。
藍家の厳しい戒律を当然の事として固く守り、己を律し、
それと気づかぬうちに感情を封じ込め、
清く正しく生きて来た筈の曦臣は、金光瑶の悪事が暴かれ、
己の剣で光瑶を死に至らしめた時、
一度は共に死ぬ事を求めた阿瑶が、そして一旦は自分もその死に殉じようと、
藍家宗主の立場も己の生も何もかも捨てようと決意したにも関わらず、
土壇場で、自分を突き放したそのことで、
曦臣の世界は、壊れたのだと思う。

最後の最期に為ってようやく、藍家直系の男の呪のような
「一度心に決めれば生涯ただ一人を愛し抜く」その相手が、
金光瑶だと知った曦臣が、その運命の片割れを、
自分の手で成敗する形となって、永遠に喪うという絶望は、
彼の心を砕くに充分過ぎただろう。
曦臣の喪失の深さ、苦痛の大きさは、計り知れない。

私は、最期の時に、曦臣の愛を感じ取って納得して、
赤鋒尊と封じられることを受け入れ逝った阿瑶を、
自分だけが安堵を得て残された曦臣に対しては、残酷だ、
とも思ったこともあった。

けれど今は、阿瑶の曦臣への想いは、もっと純粋だったのではないかと思う。
死を覚悟した時、阿瑶の脳裏には、初めてまみえた日の
曦臣の姿が過ったのではないだろうか。
出自を貶され居たたまれない思いに苦しんでいた自分を救ってくれた尊い姿、
あの頃の、揺るぎない、穢れない人で在り続けて欲しい。
罪に堕ちた私に毒されないでいて欲しい。
あなたはあなたの為に生きて欲しい。

For yourself For yourself
そらさないでおくれ その瞳を
人は自分を 生きてゆくのだから
……
For myself For myself
幸せの形に こだわらずに
人は自分を 生きてゆくのだから

For myself For myself…


曦臣は、寒室での蟄居生活に入って仕舞ったけれど、
それは、自分を見つめ直す為に必要な時間だった筈だ。
彼の世界は、崩壊したけれど、彼は、生を放棄するほど、
脆い人間ではない。
そして彼は、生き永らえる事が自分への罰だとは、考えなかったのでは
ないだろうかと思う。
死者(阿瑶)の声を願いを考え続け、残された者、
生きて行かねば為らぬ者の、務めを悟るのではなかろうか。
曦臣は、彼の世界の崩壊から立ち上がり、
ゆっくりとけれど着実に再生へと向かって行くのだろうと思う。
その時きっと彼の脳裏には、
在りし日の阿瑶の柔らかに微笑む姿が映っているに違いない。

 

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「あの頃のまま」

アーティスト ブレッド&バター
作詞 呉田軽穂
作曲 呉田軽穂

6時のターミナルでふりむいたきみは
板に付いた紺色のスーツ
今でも気まぐれに街をゆくぼくは
変わらないよ ああ あのころのままさ

去りゆく若い時間をひとり止めしているようで
うらやましいやつだよとはじめて笑ってくれた

For yourself For yourself
そらさないでおくれ その瞳を
人は自分を 生きてゆくのだから

ネクタイ少しゆるめ 寂しげなきみが
馴染みの店に腰すえる夜は
陽焼けした両足を投げだしてぼくも
"Simon and Garfunkle"
ああ ひさしぶりにきく

人生のひとふしまだ 卒業したくないぼくと
たあいない夢なんかとっくに切り捨てたきみ

For myself For myself
幸せの形に こだわらずに
人は自分を 生きてゆくのだから

For myself For myself…