曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

青蘅君と藍夫人 再考


「魔道祖師」作者墨香銅臭先生が青蘅君と藍夫人の箇所に加筆なさった。

 

「父親は家に閉じこもって誰にも会おうとしなかった。
途方に暮れた長老たちは、
その女性に父親を説得してくれるよう頼むしかなかった。」
「彼女はただ、父の家の庭の階段にリンドウを置いただけだった。」
「その後は、母だけが父を訪ねることができた。
母はいつも何とかして父にドアを開けさせた。
母は一言も発する必要がなかった。」

 

驚いた。
長年、藍夫人は、竜胆の離れに軟禁され
自由に外に出ることが出来なかったと思っていたから。
そして藍渙のあとに藍湛が生まれていることから、
月一回の母子対面を許される代わりに、なかば強制的に青蘅君は、
藍夫人へ肉体交渉を迫っていたのではと疑っていた。
私は、青蘅君に対して、藍渙と藍湛の母親へ
己の恩師殺人という罪を犯させ囚人の如き境遇へ
追い込んだという深い罪悪感を抱いているのだと、
それでいてなお夫人への執着と情欲を消し去ることの出来ぬ、
狂気を内奥する人間だと感じていた。
そして藍夫人に対しては、竜胆の離れという閉鎖された空間に囚われ、
定期的に訪れる青蘅君に我が子達との対面と引き換えのように、
身体を開くしかないという境遇に、
次第に心を病んで行ったのではないかと考えていた。
だからこそ、月一の面会時に、藍湛をからかって微笑むという
余裕をみせつつ、突然に「いなくなった」のではないかと考えていた。
彼女が病気で死んだのだとしたら、病気になった記述が
少しもなかったから。病気で次第に弱っていったのだとしたら、
いくら六歳で幼い藍湛でも認識出来たろう。
母の家の前でずっと跪き続けることもなかったろう。

今回の加筆で、青蘅君と藍夫人の間に、
言葉が要らぬほど確かなものがあった。
愛があったと知らされたことは、大きな衝撃だった。
ドラマ「陳情令」では、魏無羨座学参加時、
既に青蘅君はこの世を去っていたが、原作では、
温氏による雲深不知処襲撃時まで存命し、闘い、負傷ののち落命したと
されている。
藍夫人の死から十年近く青蘅君は、閉閥したままだったのだろう。
長い時を彼は、どう過ごしていたのだろう。
やはり青蘅君と藍夫人は、大きな謎だ。

 

 

金光瑤と秦愫

金光瑤が阿松(金如松)を殺した理由は、
阿松に近親相姦による発達障害の兆候があったからではなく、
実は阿松が阿瑤の子ではなかった。
秦愫が暴漢に襲われ孕んだ為に早急に対処する必要に迫られ、
都合の良い相手として金光瑤を選んだのだという考察を見た。
仰天した。
私の認識では、秦愫が阿瑤に初めて出逢ったのは、阿瑤が温家へ潜入時代、
温氏兵に襲われそうになっていた秦愫を阿瑤が助けた時だったと記憶している。
その後、温若寒を討った阿瑤が金家に迎えられた後に再会し、
「娼婦の子」という阿瑤の出自を唯一気に留めない彼女の好意に、
阿瑤も心開いて互いに愛し合うようになり、婚姻を望むようになった。
勿論金宗主も秦家も阿瑤の置かれた境遇から結婚を容易く認める筈もなく、
窮余の一策として「婚前妊娠」を目論んだ。
それも秦愫の方が積極的に、というのが私の見立てだ。
阿瑤と秦愫に心の繋がりがなかったとか、
阿松が殺されたのは、「阿松は金家の誰にも似ていなかったから」
だというのは、あまりにも飛躍し過ぎていないだろうか。
それでは阿瑤が阿松を殺さねばならなかった理由に乏しいし、
もしも秦愫が阿松が阿瑤の子ではないと認識していたのだとすれば、
阿松が死んで10年近く経って「阿瑤が阿松を殺した」真実を知り、
あれ程取り乱しはしなかったと想う。
「父親が我が子を殺した」という事実に戦いたのだと想う。

芳菲殿でのあの悲劇は、「阿瑤と秦素が異母兄妹だった」
「阿松は近親相姦の事実を隠す為に殺された」というおぞましさが
核になっているだろう。
我が子を殺さねばならなかった阿瑤の地獄を描くことで、
観音廟へと続く「悪者としての阿瑤の生き様」が
際立っていくのだと想う。

 

藍夫人と秦愫

曦臣が37歳の時点で(立場上強く求められていただろうに)
妻帯していなかったのはやはり両親青蘅君と藍夫人の結婚生活が
決して幸せなものとは思えなかったからだろう。
両親の経緯を「知りたくもない」と答える程には、
触れたくない好ましくないものと捉えていたのだろう。
母は父に攫われるようにして(その為に)罪を犯し
父は罪人の母を生かす為に婚姻し自らは閉関した。
父は母を愛するがゆえだったろうが母は父を愛していたのだろうか?
自分と忘機は母に愛されて生まれて来たのだろうか?
母の死は自分達を捨て自死を選ぶことで
自由を求めたのではないだろうか?
忘機の2歳上8歳になっていた曦臣には拭い去れない心の傷に
なっていたのではないだろうか。
曦臣が恋愛というものに無自覚あるいは
自ら封印していたように感じるのは、
父母の結婚生活を巡るトラウマがあっただろうからだと思う。
それが無ければ阿瑤と秦愫との結婚話に
何らかのリアクションがあったかもと思ってしまう。

 

藍夫人は雲深不知処に軟禁され8~9年?月一で子供に逢わせて貰い時々夫に
(無理矢理?)抱かれて。無理矢理じゃないな、
子供に逢わせて貰うのと引き換えのようにか、
務めのように、心を殺して諦めきって冷めきって。

秦愫は挙式前のただ一度のみ夫との交わりで、
自分で育てられたけれど3~4歳で我が子を亡くし
その後10年近く孤閨をかこち夫には偽られ続け
最期に真実を知らされ絶望の淵に堕とされた。より不幸なのは?


魔道祖師の女達のうち一二を争う地獄を味わった女性だろう。
男達に翻弄された生涯。救いと言えるかどうか判らないけれど、
藍夫人も秦愫も人生の最後は自分で幕引きを選んだのじゃないかと思うところ。
秦愫は阿瑤に操られて死んだのじゃなく自らの意思で誇りを守る為に
自死したのじゃないかと思っている

 

 

ざんげの値打ちもない


山﨑ハコさんが「ざんげの値打ちもない」を歌う映像を観た。
若い頃のイメージしかなかったけれど、年齢を重ねて、
けれど歌唱力は更に円熟味を増して、物凄い迫力で
あの「ざんげの値打ちもない」の世界を表現されていた。
幻の第4番の歌詞を初めて聴いた。
阿久悠さんが自ら山﨑ハコさんに歌って欲しいと請われたそうだ。

 

あれは何月、風の夜
とうに二十も過ぎた頃
鉄の格子の空を見て
月の姿がさみしくて
愛と云うのじゃないけれど
私は誰かが欲しかった

 

金光瑤は、懺悔などしないと思う。
自分の犯した罪を神や仏に赦しを請う、そういう人ではないと思う。
けれどこの4番の歌詞「とうに二十も過ぎた頃」ならば、
薛洋の処遇を巡って聶明玦に責められ金鱗台を蹴り落とされた夜ならば、
白月光たる曦臣さえも自分を照らしてはくれないのだと思い知らされた
あの夜(原作軸)ならば、
阿瑤は切実に誰かの愛を願ったのではないだろうか。

数限りない痛みや苦しみ恨みを心の奥底に秘めて、
数限りない悪事に手を染めて、誰にも真の姿を隠し続けて生きて来た彼が、
最期に自分は生涯罪を重ね続けてきたけれど
「あなただけは害そうと思わなかった。それだけは信じて欲しい」
それこそが阿瑤の祈りだったのだと思う。

『ざんげの値打ちもないけれど
私は話してみたかった』

 

 

薛洋と懷桑

「陳情令」義城で薛洋は、魏無羨に
『迫真の演技をする騙し上手な友達がいる。』と語った。
この友達とは当然「悪友」たる金光瑤だと思うけれど、
物語上最高に演技が上手かった聶懷桑を指すのだという意見もある。

確かに打倒金光瑤を目指す聶懷桑にとって魏無羨を復活させる事は、
暁星塵を蘇らせる為に長年試行錯誤する薛洋にとって、
魏無羨復活は最後の手段として利害が一致したのかもしれない。

けれど兄聶明玦の死に関わった薛洋を
聶懷桑が「友」などと扱う訳はなかろうし、
薛洋の方からも聶懷桑は、
単なる協力者に過ぎなかったのではないだろうか。
「悪友」の中で、薛洋は、金家で金夫人から虐待を受けるなど
劣悪な処遇を受けている金光瑤に「俺が代わりにやってやろうか?」と
声を掛けている。これこそ「友人」だ。

観音廟、金光瑤が最期に、「父を殺し、兄を殺し、妻を殺し、
子を殺し、師をを殺し、友を殺し、世の中で
悪事と呼ばれることはすべてやってきた!」と言い放った
「友」とは、薛洋に違いない。
薛洋の一生は、悪に塗れた悲惨な人生ではあったけれど、
金光瑤との交友そして、何としてでも取り戻したいと願った
義城での温もりのひとときを持てたことは、
唯一の光だったのかなあと思う。

 

 

金光瑤の生涯を終わらせた男

この前書いた時系列は金光瑤中心で、
現代「莫玄羽が献舎の術で魏無羨を蘇らせた」まで書いたけれど、
「魔道祖師」物語のマニュピレーター聶懐桑軸で考えてみた。
まずこの莫家で魏無羨が蘇る前に聶懐桑は、
莫家での莫玄羽の境遇を知り、
色々聞き出しまた報復の手立ての相談に乗る形で
魏無羨への献舎を薦めたのではないかと考える。
それ以前のある時期に、金光瑤に軟禁されていた思思の身柄を確保。
秦愫と金光瑤の異母兄妹の事実を知る楽凌秦氏の侍女碧草の存在を把握。
傀儡とされていた温寧を捕捉。
(大梵山で食魂天女に遭遇した忘羨の前に温寧を放ったのは、
懐桑だと思う。)
「左手」を入手。

魏無羨復活

藍思追と藍景儀が流浪屍退治に訪れていた莫家に「左手」を投げ込む。


忘羨に清河行路山石造りの砦へ誘導。謎の両足を見つけさせる。
胴体回収。

少年組を義城へ誘導。
謎の右手が発見される。

聶明玦の死に金光瑤への疑惑を抱いた忘羨が金鱗台へ
懐桑は、宴で酔い潰れ金光瑤に時間稼ぎをする間に
碧草が秦愫への手紙を届ける

 

蓮花塢で仙門百家の前で思思と碧草に証言させる
(碧草の手首に翡翠の高価な腕輪)
議場で金光瑤討伐へと巧みに誘導


蘇涉にわざと捕まり観音廟の舞台へ
そして一瞬訪れた好機を見逃さず、
長年の仇を討った。
最後に手にしたのは、
仇敵が愛用していた布製の帽子。
(自らの手は汚さないと自負していた懐柔に
仇の流した血が残った。)これは「陳情令」だった。


こう纏めてみるとあらためて懐桑って凄い!

 

 

阿瑤中心魔道祖師時系列

 

 

20年前   孟瑶15歳 金子軒15歳の誕祭の日に金鱗台へ行き
      大階段から蹴り落とされる

      魏嬰15歳
      忘機15歳 姑蘇座学で出逢う


17年前   雲深不知処襲撃され逃げ延びた藍曦臣(20歳)を孟瑶(18歳)が救う

      魏嬰18歳
      忘機18歳 屠稑玄武を倒す

      射日の征戦始まる

      孟瑶、聶氏に入り明玦に見出され副官になる。
      曦臣と再会し曦臣の薦めで明玦から金氏への紹介状を書いて貰う
      上官に手柄を奪われ続け遂に殺害する現場を明玦に見つかり
      激しく叱責され狂言自殺の末に明玦を刺して逃亡
      その後2年近く温氏へ潜入
      
      孟瑶、温氏潜入期間に秦愫と出逢う

15年前   孟瑶(20)、温氏に捕えられた明玦を嬲る 
      孟瑶、温若寒を討ち射日の征戦が終わる
      孟瑶、金氏に迎えられ金光瑤の名を与えられ、斂芳尊の号を得る。
      明玦の赤鋒尊、曦臣の沢蕪君と共に義兄弟の契りを結び三尊と謳われた
      蘭陵金氏で花見の宴
      百鳳山で巻狩
      魏嬰(20)乱葬崗へ

14年前   金凌誕生
      金子軒(20)死亡 血の不夜天 江厭離(2)死亡

13年前   藍忘機(23)戒鞭を受け3年療養
      魏嬰(23) 死亡

12年前   金光善、莫玄羽(14)を迎える

      常氏を滅亡させた薛洋(16)を暁星塵(17)が捕え金鱗台へ
      金光善は薛洋に陰虎符を修復させようと目論むも
      聶明玦は金光瑤に薛洋の処刑を強く迫り激昂した
      明玦が金光瑤を金鱗台大階段から蹴落とす
      金光瑤は藍曦臣に習っていた清心音に乱魄抄を混ぜ
      聶明玦の謀殺を謀った
      聶明玦死亡

      このあたりで金光瑤と秦愫の結婚?

11年前   

      金光善死亡(金光瑤は父光善を見限り、薛洋に手伝わせ、
                     光善に相応しい死を与えた)

                   金光瑤(25)仙督になる
      金光瑤、薛洋を殺そうとする

7~8年前? 阿松死亡  

3年程前  金光瑤(32)、莫玄羽を金鱗台から追い出す

現代    魏無羨が莫玄羽(27)による献舎の術で蘇る

 

 

聶明玦の年齢がはっきりしない。懐柔が阿瑤達の一つ下だから

孟瑶18歳、聶明玦22歳くらいで出逢っている筈。

百度百科によると明玦は懐柔の5歳上になってた)

 

修正必要