曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

「君はプリズム」金光瑤人物像について

私が「孟瑤」「金光瑤」に注目し始めたのは、「陳情令」第4回あの孟瑤が副使として
聶家の献上品を手渡すシーンからでした。
出自を揶揄されて狼狽するあの仕草、そして藍曦臣に救われ(指をそっと撫でられ)
当惑しつつ(心躍らせる)あの目の動き。
その直後に乱入して来た温晁等の傍若無人な振る舞いを
裂氷で鎮圧した曦臣を見つめる孟瑤の表情。
一人回廊で藍曦臣を待つ孟瑤が曦臣の姿を目にするや瞳を輝かせて駆け寄る姿、
聶氏の客卿である自分は座学に残ることは出来ないと
「孟瑤、告辞」と曦臣の手をすり抜け、去って行く時の、
通り過ぎる子弟達に顧みられることのない
我が身の境遇に苦い思いを嚙み締める表情が心に残りました。
その後であの「多恨生」MVで決定的に、金光瑤に嵌まった訳です。


陳情令第43話で、金光瑤が「清心音」に邪曲「乱魄抄」を混ぜて
赤鋒尊を殺害したのだと魏嬰と忘機に告げられた曦臣は、驚愕する。
『私の知る金光瑶とお前たちの知る金光瑶、そして世人の知る金光瑶は全く違う
 長年、私の中での金光瑶は屈辱に耐え、衆生を顧み、上を尊び、下を哀れんだと
 固く信じてきた…世人は誤解から彼を嘲笑するが、私の知る彼こそ真実だと。
 全ては偽りだと言うのか。』

私は、阿瑤が曦臣に見せた姿を偽りだったとは思わない。
曦臣に己の悪を気づかせまい闇を悟らせまいとしたのは、
騙そうとしていたからでは無く、曦臣を失望させたくない
傷つけたくないという思いがあったからだと思うのだ。
自分にとって唯一の「白月光」たる曦臣を汚すまいと
阿瑤は、父光善に命じられた悪事の数々、赤鋒尊との軋轢等々、
もしかしたら曦臣に告白出来ていたらその後の惨劇を防げていたかも知れぬ機会を
自分で潰したのだと思う。

阿瑤は、見る者によっては、己の為には平気で人を殺す
狡猾で冷酷な悪人と映るだろう。
けれど彼が心から信頼した者達、曦臣や秦愫へは心からの慈しみを、
尽くしてくれる蘇渉へは、労りを、最期まで疑うことも無かった懐桑へは、
(聶明玦殺害後は、懺悔の念もあったろうが)
聶家で暮らしていた当時のように自分が庇護すべき対象として、細やかな情を
掛けていたのだと思う。

そして甥金凌に対しても、彼らの両親の死に責任を感じていた事もあろうけれど、
慈しみ育てたその情は、うわべだけのものでは無かったろうと思っている。
力の弱い者達、貧しい者達を救おうとした
為政者としての彼の姿もまた真実であったろう。

阿瑤は曦臣に理想の自分を演じて見せたのではない。
曦臣の前でだけ阿瑤は純粋に「善」の自分に為れたのではなかろうか。
私の思う阿瑤という人は、プリズムだ。
見る者の視点によって彼は、様々な色を帯び、
そこに映し出される像は、変化する。

金光瑤(孟瑤)の本当の姿は、本人にも判らなかったのでは、ないだろうか。
阿瑤は、永遠の謎、「迷宮」だと私は、感じている。

 

 

「阿瑤は、曦臣を失望させたくない
傷つけたくないという思いがあったからだ」と書いたが、
阿瑤を心から信頼したからこそ藍家秘伝の「清心音」を教えた、
専用通行玉佩を贈ったその真心を裏切って禁室に忍び込み
「乱魄抄」を盗み出した。
その行為がどれ程曦臣を傷つけることかに思い至らない。
曦臣は嘆く。
『全ては偽りだとすぐに信じろと言うのか?
彼が義兄弟を死に至らしめ、私もその駒だった。
それどころか、手を貸していたと?』

やはり阿瑤の中には、底知れない欠落、空洞というものがあって、
多面体阿瑤は、変幻自在にに光を屈折させるのかも。
理解することなど到底無理なのかもしれないな。