曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

藍曦臣の閉関

原作「魔道祖師」において観音廟後に藍曦臣が閉関した事は、
番外編「家宴」に書かれている。
自ら閉関を解いたのか周囲(主に叔父上)から引っ張り出されたのかは
定かではないが、夜狩りの場所を間違えたり儀式の手順を間違えたり、
曦臣は心ここにあらずといった態で、藍啓仁が嘆いたという描写がある。
藍曦臣は、閉関中どう過ごしていたのか?
曦臣が一番心を痛めたのは、義兄弟の契りを結ぶことを自らが薦めて、
聶明玦と金光瑶と共に三尊と為った、その金光瑶が聶明玦を殺した、
藍家秘伝の「清心音」を教えた事実、
「乱魄抄」を盗み出していたという事実に打ちのめされたからだと思う。
聶明玦と阿瑤とのわだかまりは、承知していた筈。
原作で阿瑤が金鱗台大階段から明玦に蹴り落とされた場面に曦臣は居た。
けれど曦臣は阿瑤を宥めるだけで明玦を諫めはしなかった。
金光善(夫人も)が阿瑤をないがしろにし辛く当たるのを曦臣は
見知って居た筈だけれど、曦臣がそれに対処した形跡はない。
他家の内情に踏み込まないという慎みの所為かもしれないけれども、
私には曦臣の「調和を取り繕う」「見て見ぬ振りをする」
いつもの習性のような気がする。
観音廟で全てが明るみになり、聶懐桑に謀られて曦臣は、
阿瑤を刺してしまい、その結果阿瑤は死に至った。
曦臣は「阿瑤が判らない」と言う。
阿瑤と知り合って二十年近く、阿瑤が己に見せていた貌は
本当の阿瑤だったのか?全てが偽りだったのじゃないか?
最後に朔月で胸を刺した自分を阿瑤は恨んでいるのじゃないか?
だから最後の最期、阿瑤は己を突き放して置き去りにしたのじゃないか?
曦臣の苦悩は、これだろうと思う。
決して夜毎、血塗れの阿瑤が現れて、
曦臣に恨み言を言いに来るのでもなく、
曦臣へ死を誘うのでもないだろう。
曦臣の脳裏に浮かぶのは、
「何故、自分だけへは傷付けまいとした阿瑤を信じてやれなかったのか?」
「何故、あの時あの場面、阿瑤を守れなかった?」と
責め苛む自分の分身の姿だろうと思う。

閉関曦臣については、まだまだ考え尽くせない。
けれど、無理矢理復帰させるのではなく
思う存分か本人の気の済むまで答えを得るまで悟りを得るまで、
時間を掛けるべきだろうと思う。