曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

金光瑤の遺したもの

阿瑤は、曦臣の信頼を裏切って禁室に忍び込み「乱魄抄」を盗み、
大哥を死に至らしめたのだから曦臣がそのいきさつを知って、
阿瑤に渡した通行玉牌を失効させたのは当然です。
当然の事ながらも阿瑤が雲深不知処の結界に阻まれた時の驚きと悲嘆を思うと
哀れに思ってしまうのです。
「失効したので」と返しに来て、
それでも尚言葉巧みに言い繕おうとする阿瑤と

堅い表情の曦臣との緊張感溢れる遣り取り。
去って行く阿瑤の後ろ姿。遠い昔同じ場所で自分を待っていたいたいけな少年の姿。
そして権勢を極めた末に自分から遠く離れて行こうとする姿、本当に印象深かった。


「離れていこうとする姿」
曦臣だけは傷つけまいと阿瑤は金鱗台へ連れて行った上で軟禁しちゃうのですが。
曦臣から見たら同じ志を持つ正道を歩む人だと思っていた
阿瑤が実は清廉とは遠い存在だと認識したのだろうなと思うのです。

曦臣は、独り籠もる寒室の中で、

あの阿瑤の後ろ姿の対比を何度も思い返すのでしょう。


「あなたを害しようと思わなかった」って言ったけれど、
阿瑤はこの裏切りでニ哥をどれ程傷つけたことか、考えが全く至らなかったのだろう。
阿瑤は聡いけれど過目不忘の能力と引き換えにどこか欠落しているのでしょう。

ニ哥を裏切ることの結果を考えてない&許して貰えるかもという甘え?
聡い筈なのにどこかスコンと抜け落ちている。
総領を殺した時の大哥への甘え?にも通じているように思えます。
それが阿瑤の欠落かと思うと痛ましいです。

同時に阿瑤が初めて人に認められ居場所を与えてくれた大哥(聶明玦)への恩と
初めての殺人を糾弾され追放された時の落胆の深さ、
灰色の世界に光明をを照らしてくれた二哥(藍曦臣)への敬愛の強さ、
それらはもはや尋常ではないほどの執着だったのでしょう。

生まれ落ちてからの阿瑤の生涯は、屈辱と苦悩の連続だったでしょうが、
母から与えられた愛と誇り、
それらは我が身を縛る強すぎる呪縛でもあったでしょうが、
彼は、「社会に認められる」その一点を目指し果敢に挑戦したのだと私は、

思っています。
確かに手段は、間違っていたし、無辜の人々を犠牲にした。
その悪は、糾弾されるべきだと思います。
けれど彼は、彼にしか出来ない貧しく底辺の境遇に苦しむ人々を助けた面もあった。
悪い生まれだから悪い事をした訳では決して無い。
彼には、彼の鮮やかに生きた証があった。
それを覚えていてくれる庶民もきっと居ただろうと信じたいです。