曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

阿瑤は、母孟詩をどう思っていたか。

前に「卑しい生まれ卑しい育ち」という言葉について書いたことがあるけれど、
阿瑤は、娼婦・妓女を卑しい職業だとは思っていなかったろうと私は、思う。
娼婦が産んだ子供であることを卑しい産まれ、
娼館で育った事を卑しい育ちというならば、
娼館を利用し女達を自分の性欲の為に消費し、娼婦に子供を産ませ
碌に金も渡さない男を下劣と言わずしてどうするのだ。
権力・財力を持つ男達に阿り弱い立場の女子供を貶め
「卑しい生まれ卑しい育ち」と蔑む者達の心根こそが「卑しい」のだと
私は、思っている。
だから阿瑤が「妓女の子」と呼ばれて怒るのは、
決して母孟詩が妓女だったことを恥じているからではなく、
廻りが阿瑤を非難する時に阿瑤自身ではなく母孟詩を侮辱していたからだと思う。
父光善がいつか迎えに来てくれた時に恥じないように、
立派な教育を受けさせたい(まがい物を掴まされて大金を喪ってしまったけれど)
という思いから、孟詩は阿瑤にありったけの愛情を注いだ。
「君子正衣冠」
「金光善に迎えられる」
その願いは、阿瑤にとって重すぎる枷になってしまったけれど、
きっと阿瑤は、母のその願いは、幸薄い女人の儚い夢だと認識していただろうけれど、
生涯掛けて母の夢を実現しようと挑戦し続けた。
後年阿瑤は、育った青楼を燃やしたけれど、
自分が青楼育ちだという過去を消去しようとしたのではなく、
孟詩母子を虐げた人々への復讐だったろうと思う。
母孟詩をこれ以上「妓女」と蔑ませさせない、
青楼跡地に母の顔に似せた観音を祀ることで人々に母を崇めさせたい、
母の生前の屈辱を少しでも晴らさせたい、そういう気持ちがあったのでは、と思う。