曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

改めて「多恨生」を考える

阿瑶の類い稀な能力「過目不忘」とは
一度目にしたものは全て覚えている、一度目にした技を自分のものに出来るというものだ。

これまで自分は、受けた屈辱、痛み、苦しみ全てを忘れられないという事は、
どんなに辛いだろうとしか、捉えられていなかったが、
この「過目不忘」は、サヴァン症候群に近いものがあるかも
という指摘を頂いて、戦慄した。

突出した能力と引き換えにどこか欠落したものがある可能性がある。
生まれ持った空洞?
それは金光瑶テーマ曲「多恨生」の一節”愈善辯 愈詞窮 澆灌空洞”に
通じるのではなかろうか。
『雄弁になれば為るほど言葉は貧しくなり虚しい穴に注ぐ』

母孟詩の自分を捨てた男を強く恨みながら我が子に
「あなたのお父さんは、大仙家の当主なの、いつかきっと迎えに来てくれる」
「あなたはきっと立派になれる」と繰り返し続けるその妄執は、
幼い孟瑶にどれ程の呪縛を与えた事だろう。
孟瑶に何が欠落していたのかは、判らない。
判らないながらも、彼が抱えた空洞は、ブラックホールのように
広がり続けたのではないだろうか。
父と母どちらにもトラウマを抱きながら、
決して誰にも理解されず、求める愛を得られず、彼は、苦難の人生を歩んだ。
空洞は、阿瑶の恨み憎しみを吸収し続け、最後に彼自身を呑み込んだ。
”說什麼天生為朽木
 說什麼命定成劫數”
『生まれながらの朽木なんて
 悲しい運命もう決まっているなんて』

決して金光瑶の悲劇が父光善や母孟詩の所為だと言っている訳ではない。
悪を行ったのは、光瑶自身だ。
それぞれの行程でそれぞれの選択肢があった筈だ。
それを最悪の道へと選び続けたのは、阿瑶本人。
判っている。判っているからこそ限りなく痛ましい。


金光瑶を演じた朱賛錦さんがインタヴューで
『阿瑶の人生は、凄く疲れる。次の人生では幸せになって欲しい。
ただ凄く良いだけのね。うん。心の中で。』と胸にこぶしをあてていた。
柔らかい笑みを浮かべて。グッと来ました。

朱賛錦さん、この金光瑶演じるのは、本当に大変だったと思う。
でもあなたが金光瑶を演じたからこそ、
私はここまで金光瑶に惹かれました。
心から感謝しています。