曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

金光瑶「何が彼をそうさせたか」

「金光瑶の人生を考える」その一
金光瑶は、何故あそこまでの悪を為したか。
一言で言ってしまえば、やはり生まれと育ちなのかなあと思う。
いくら父親が大仙家の当主であろうとも、品性は最悪だし、
母親は、妓女にしては教養があるとはいえ、所詮一般人。
生まれ育ったのが娼館で、環境はすこぶる悪い。
幼い頃から周りの蔑みに耐え、母親には過剰な期待を寄せられる。
いつの日か大仙家の父親が迎えに来てくれる、その夢を繰り返し、
貧しい暮らしの中、孟瑶に教育を受けさせようと金をだまし取られ、
蔑まされ、大人達への恨み、憎しみを募らせていく。
負の境遇から抜け出そうという思いばかりが強くなる。
なまじ親孝行なものだから、母親の最後の願いを叶えようと
父親に逢いに行き、手酷い仕打ちを受ける。
聂家に仕えることになって、有能さ・勤勉さを認められて
副官にまで抜擢される。
TOPに目を掛けられれば掛けられるほど、周囲は、
孟瑶の一番触れて欲しくない「娼婦の子」という言葉で
蔑み、反感を募らせる。
原作では、この時点で藍曦臣に出逢っているのだ。
孟瑶が同僚たちに飲み物を手渡していくが、彼らはわざとらしく、
まるで汚れているかのように手を拭ってみせる。
藍曦臣だけは、礼を言って微笑む。
孟瑶にとっては、初めて認められた思いがして嬉しかったのだろうなあ。
藍曦臣と一緒にいられた時間は、本当に短いものだったけれど。

聂明玦も最初は、孟瑶に期待して、
剣法も修練すれば良いと言っていたけれど、
残念ながら上達しなかった。
修行は、広く深く極めることが出来なかった。
だからこそ、彼は百の家族の長を欲しがり、
訓練によって培われた能力を磨こうとした。
一方で阿瑶は、記憶力に秀でていた。
一度会った人の外見、名前、年齢、称号を記憶し、
2回以上会った場合、彼は相手のすべての好みや不幸を覚えて、
最適な対応をすることが出来る。
一度目にしたものは全て覚えている、一度目にした技を自分のものに出来る
「過目不忘」という能力だそうだ。
サヴァン症候群に近いものがあるらしいと聞いた。
突出した能力の代わりにどこか欠落したものがあるのかもしれない。

聂明玦は、孟瑶を信頼し期待し、彼なりに可愛がっていた分、
孟瑶が自分を苛め抜いていた総領を殺害してしまった時、
許せなかったのだろうなあ。
聂明玦の一本気さ、少しの悪も見逃せない正義感の強さ、
『「娼婦の子」などというくだらない中傷に負けるな。』という
厳しい叱責は、傷つきやすい孟瑶の心には、届かなかった。
怖れと反感を植え付けてしまった。
ここから歯車が狂っていったのだろうかと思う。

折角貰った金家への紹介状を用いることなく、
(実際は、聂家に来る前に、金家で大階段を蹴落とされているから)
温家へ潜入することになる。
ここでも短い期間に温若寒の信頼を得て、
軍事プランを奏上するほどの副官にのし上がる。

温家の内情を詳しく探り、最初は匿名で藍曦臣に情報を送り、
信頼を得ていく訳だが、全くの好意だけとも思えない。
一介の使用人である自分が大きな手柄を建てようとする野心。
見事に策が嵌り、温若寒を刺し殺すという大手柄を建てる。
功が認められ、金光善から名を貰い名を「金光瑶」と改める。
だが「子」としてではなく、あくまでも使用人の扱い。
金光善の子や甥などの次世代には「子」その次の世代には、
「如」という名が与えられる習わしが、阿瑶には、
父光善と同じ「光」、あくまでも「子」として認められたわけではない。
阿瑶はそれでも金家の一員に為れたことを良しと
自分を納得させたのだろう。
金凌が生まれた時、金光善から抱かせて貰えなかったあのシーン、
見てて悔しかった。
全ての元凶は、この屑親父!

ドラマ「陳情令」には、
魏無羨と藍思追という幼くして親と死に別れた子供達の境遇が出てくるけれど、
いずれも立派な保護者に引き取られ、暖かな愛情と十分な教育を受けて、
健やかに育った。
片や、劣悪な環境で十代半ばまで成長せざるを得なかった阿瑶。
その差は、あまりにも大きい。
人生やり直すには、5歳ほどで若紫計画を実行せねば、無理です♪

薛洋の場合は、あの子は全く善悪を知らない。愛を知らない。
才能が非常に優れた凶暴な幼子。唯一彼を気にかけてくれた
暁星塵に執着してしまった。彼の生涯も哀しい。
この子も赤ちゃんからやり直すしかない。

続きます。