曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

金光瑶と藍曦臣の関係とは

非常に親密ではあるけれど、友情の範囲に留まっていたと考えています。
娼館育ちで早熟だったに違いない金光瑶は、実際、妻とも婚前交渉という
間違いを起こし、挙句、異母兄妹という事実を結婚前夜に告げられた時には、
近親相姦での罪の子を身ごもらせてしまっていました。
真実を知った時の恐怖と絶望は、はかり知れません。
思うにこの時から金光瑶は、己の性を呪うようになったのではないでしょうか。
深く敬愛する藍曦臣だからこそ、聖なる彼を決して汚しては、ならない。
淫らな気持ちは、徹底的に排除したのだと思っています。
妻とはもちろんですが、私は自分自身の男性という性、サガさえ憎んだのでは、
と感じています。それは、非常に不自然で更なる歪みを生じるでしょう。

原作では、金光瑶が金家を継いだ後の十数年間、ある月などは一緒に夜狩りしたり、
話したり、ほとんど一緒に過ごしたという記述があります。
藍曦臣は、金光瑶へ雲深不知処へ自由に出入りできる通行証を渡していました。
藍曦臣が魏無羨と藍忘機の調査報告により、ようやく金光瑶へ疑惑を深め、
結界を張ることになったのは、随分後のことでした。
それでも、心の底でまだ金光瑶を信じたいと思っていた。
だからこその、あの観音寺での藍曦臣が怒鳴って金光瑶の頬を打つという場面に
繋がったのだと思います。

十数年親しく付き合って何故、藍曦臣は、何も気づかなかったのか。
勿論、金光瑶は、藍曦臣に己の闇を気づかせまいとしたでしょう。
決して本当の自分を曝け出さず、理想の自分を演じ続けた。
そして藍曦臣は、あくまでも清らかに穏やかな紳士であり続けた。
私は、藍曦臣というひとは、藍家の家訓を遵守しようとするばかりに、
己の感情を封じていた面があるのでは、と思っています。
光瑶への表情、態度には、明らかに好意以上のものが見えているようですが、
本人には、その自覚が無かったように感じます。
それが、最後の観音寺での事件によって、
いまだかつて考えもしなかった程の感情の奔流に襲われた。
弟忘機に左腕を切り落とされ既に気を失わんばかりの状態の光瑶を
聶懐桑に諮られたとはいえ、実際に剣で胸を刺してしまう。
滴る血と肉の感触。
この世の悪の全てを為そうとも、貴方を殺そうと思ったことなど一度もなかった。
今まで貴方の為に貢献してきたけれど、見返りを求めたことなど一度もなかった。
それが光瑶の真実だった。
最期を悟った時、一度は藍曦臣を道連れにと望んだけれど、
藍曦臣が瞼を閉じ一緒に死ぬことを了承したその瞬間、
哀しい笑みを魅せて藍曦臣の胸を突き放した。
救われたのだと思います。
愛する人に生きていて欲しい」
それが光瑶にとって唯一の光だったから。
聂明玦と封じられることを納得して受け入れたのだと思います。

ですが、藍曦臣の方は、どうだったのでしょう。
ドラマでは、放心状態で石段に座る藍曦臣が、
「阿瑶、あなたは何がしたいの?」と呟いています。
喪って初めて藍曦臣は、阿瑶への愛を知るのではないでしょうか。
何も気づかなかった、気づこうとしなかった罪、
己が手を下したという現実、恐怖、絶望、
想像を絶する痛みが彼を襲うのでしょう。
金光瑶にとっては、この世で一番大事な藍曦臣の手にかかって、
生まれた場所で死ぬことを静かに受け入れていたように思うのです。
だからこそ、残された藍曦臣に安らぎの時が早く訪れるよう、
願います。


小説の中のお話だと重々判っておりますが
『欠落を喪失を受容せよ』と『赦し』が私のテーマでもありますので、
こういうことを延々と綴っていきたいと思います。