すっかり金光瑶に取り憑かれてしまったようだ。
考察しているつもりが次第に現実と妄想との境が、
曖昧になって来た。
妓楼育ちの金光瑶は、どう考えても早熟だったろうし、
妻秦愫 との婚前交渉を考えても、
性的には、男だったと思う。
けれど、それだからこそ、妻が異母妹だと知った時の
衝撃が大きかったのだろう。
己に金光善の血が流れていることを激しく呪ったのだと思う。
原作では、結婚後、妻以外の女性を作らなかった。
周りは皆、金夫人の幸福を羨んだというような記述がある。
隠れて愛人を作っていた?
私は、光瑶は、己のSEXすら憎んでいたのではないかと疑う。
結婚時二十歳を少し過ぎた位?
その時点から死ぬ三十四歳まで禁欲?
普通なら無理だろうが、金光瑶ならありえなくないかも、と
思った。
少なくとも、金光瑶は生前、藍曦臣とは、
そういう関係になることを望まなかったと思う。
清らかだったからこそ、金光瑶は、その死で
藍曦臣の心を愛を手に入れたのだと思うから。
「愛する人の手で死ぬ」
死んでいく方は、本望だろうが、
残された方は、堪ったものじゃない。
一緒に死ぬことを受け入れた男を土壇場で突き放して、
男の愛を奪って逝くのだもの。
愛した男の胸に己を永遠に刻み込むのだもの。
何故、阿瑶は、自分を残して逝ったのか。
夜ごと、藍曦臣は、問霊の琴を鳴らすのだろう。