曦臣が阿瑶に手紙を書くとしたら、の続きです。
最初に訪れるであろう、悔しさ怒り、
次に訪れるであろう、後悔と謝罪、深い悲しみ、
その後は、阿瑶との楽しかった美しい思い出だと思うのです。
阿瑶と過ごした長い年月、その中には、きっと
二人だけの掛け替えのない時間があったに違いないと考えました。
金光瑶が仙督になって間もない頃、
阿瑶は既に聶明玦を殺し、父光善を殺すという大罪を犯し、
曦臣には、決して知られてはならぬ大きな秘密を抱えていました。
犯した罪の大きさに慄き、家庭では、二度と触れられぬ、
異母妹の妻との夜を閉じ、夜毎悪夢に怯える地獄の日々が
始まっていた筈です。
そのような苦しみの日々の阿瑶にとって唯一の光が安らぎが、
曦臣と過ごす時間だったろうと私は、思うのです。
阿瑶が曦臣に見せるのは、阿瑶の為りたかった理想の姿、
阿瑶にとっては、演技ではない、
阿瑶の本物の一部分だったと思うのです。
曦臣が思う阿瑶の姿は、笑顔であって欲しいと思います。
月夜に浮かび上がる阿瑶の面影は、
儚く美しかったあの日の姿、
控えめに微笑む阿瑶であれば良いと思います。
阿瑶の犯した罪は罪として、それでも、
曦臣には、阿瑶という一人の人間と出逢った事を、
悔やんで欲しくないのです。
誤った選択をしたであろうけれど、苦しく痛ましい人生を
懸命に生きた人と受け入れてやって欲しいと望むのです。
捉われないで良いのです。
ただありのままの阿瑶を感じて、想ってやって欲しいです。