曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

金光瑤と金凌と曦臣


ドラマ「陳情令」では、観音殿で追い詰められた金光瑤は、
身体に埋め込んで隠し持っていた琴弦を金凌の首に掛け、
最後の足掻きをした。金凌の首に琴弦が食い込み、血が滴る描写もあった。
けれど原作では、刀霊に支配された温寧が覇下を振り下ろそうとした時、
金光瑤は、とっさに金凌を突き飛ばして助けたし、
金凌の首には傷一つ着いていなかったのを魏嬰が確認している。
阿瑶は、金凌を人質に取ろうとはしたけれど、
決して傷つけるつもりは無かったのだと思う。

意図しなかったとはいえ、金子軒と江厭離の二人の死、幼い金凌から
両親を奪った責任を阿瑶は、感じていたろう。
金氏の頂点に立ってからは、己が責任を持って育てねばと思っていたろう。
秦愫との間に許されざる子「阿松」が生まれてからは、
罪が公に為らないことを切望しながらも、愛と嫌悪の狭間で揺れ動く
阿瑶の「阿松」への心情は、筆舌に尽くしがたいものがあったと思う。
いよいよ隠し通せないと悟った時、阿瑶は阿松の存在を切り捨てた。
父性を断ち切った。
だからこそというべきか、にも関わらずというべきか、
阿瑶は、金氏の後継者の金凌へ養育者としての愛を注いだのだろうと思う。
外叔父の江澄は、あの通り言動も厳しいから、
阿瑶はきっと母のような慈しみ柔らかな情を示したのだろう。
原作「狡童」の中で、金氏の悪ガキどもに虐められていた金凌へ
魏嬰が戦い方を伝授してやった時、金凌が
『瑶叔父上は、「喧嘩するな、皆と仲良くせよ」と諭すばかり』
と話していた。
出自の低さ、霊力の低さからずっと虐げられ続けてきた
阿瑶の「出来るだけ人と争わず我慢してやり過ごす」
そうであるしか生きて来られなかった人間の哀しさを強く感じた。

私は、阿瑶から「父性」と「母性」の両方を感じるのだ。
両親からの情を上手く受け取れなかったであろう、
知らず知らずのうちに切望していたであろう曦臣も
阿瑶から放たれる「父性」と「母性」に包まれることを
享受していたのではないだろうか。

私は、金凌と江澄と阿瑶が、金凌の養育時において
疑似家族のようであったのではと想像していたけれど、
もしかしたら金凌と曦臣と阿瑶も、
そのような家族のような団欒のひとときもあったのでは、と思う。

アニメでは、全ての悪が金光瑤の所為に描かれているようだけれど、
原作日本語訳第3、4巻が完結時には、
金光瑤の愛の部分を認識してくれる人が増えることを祈る。