阿瑶は秦愫を口封じの為に自害するように仕向けたのか。
私も「陳情令」の第一印象で阿瑶はあの温氏の匕首に何か仕込んでいたのじゃないか、
秦愫に術でも掛けたのじゃ?と疑った事があった。
秦愫との結婚自体も金氏の有力配下である蘭陵秦氏の息女という立場を
我が身の地盤を築く為に、、、。
でも射日の征戦で阿瑶が秦愫を救ったのは、企みなどでは無かったのでは。
天真爛漫で阿瑶の出自など全く気に留めない
おおらかであどけない娘に好意を寄せられ、金氏に入っても蔑まれ続けていた阿瑶は
心救われて、更に互いに異母兄妹と知らぬままに本能から近しいものとして
惹かれ合ったのだと思う。
恋仲に為っても二人の結婚には反対も多かった筈。
だからこそ阿瑶と秦愫は結婚を確実にする為に
婚前交渉という手段をとったと考えている。
秦愫が密告の手紙を受け取り、二人が異母兄妹だという事実が明らかに為った時、
阿松の死の真相を知らされて、あまりの事実に秦愫は、絶望する。
長年心から信頼し愛し続けてきた夫が実は、異母兄であり、「近親相姦」という
事実を隠すために我が子を殺したのだ。
阿瑶がどれだけ言葉を尽くそうとも、もはや秦愫には届かない。
頑として密告者の名を教えない秦愫を阿瑶は、身体の自由を奪って、
銅鏡の裏側の密室に軟禁する。
この状況を煎紙化身によって見ていた魏嬰は、直ぐさま忘機、曦臣と共に、
芳菲殿に駆けつけ、阿瑶に密室へと案内させた。
魏嬰、忘機、曦臣、江澄、金凌、懐桑、そして夫光瑤、
あの場に勢揃いした面々を目にして、秦愫は、何を思ったろう。
我が子を殺されて怒り、悲しみ、憎んだ夫であり兄でもある男、
それでも秦愫は、彼を愛していたのではなかろうか。
事実を自分の口から明らかにすることは出来なかった。
阿瑶を守りたかったのではなかろうか。
異母妹と知りながら子を産ませ、「近親相姦」の禁忌が顕わになりそうな時点で、
我が子の命を奪い、それでも身近に留めることを望んだ、
阿瑶の秦愫への執愛の凄まじさ。
最後まで阿瑶は、秦愫を生かそうとしていたのだと思う。
秦愫を喪った阿瑶の慟哭に嘘は無いのだと私は、信じたい。