曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

藍曦臣の目を瞑る癖

観音殿で藍曦臣は、「金光瑤の悪を知らぬ訳ではなかった」と言った。
「やむを得ぬ事情があるのだと思っていた」と。
金光瑤の悪に目を瞑っていたのだ。
己の抱く金光瑤の理想像が崩れる事を怖れて?
金光瑤が己に隠す闇の部分を突きつけられたくなくて?
曦臣は、己の見たいものしか見ようとしなかったのだろう。
曦臣の感じた「悪」とは、金光善の意向を汲んで阿瑤が行った、
温家残党虐殺や陰虎符収集と修復などであろうけれど、
もし曦臣が阿瑤の「悪」に気づいた時点で、
阿瑤にちゃんと向き合っていれば、その後の聶明玦殺害や、
金光善殺害には、至らなかったのではないだろうか。

そして聶懐桑に謀られて、とっさに目を瞑ったままで、
左腕を斬られて気絶寸前の阿瑤の胸をを朔月で突き刺したあの場面。
阿瑤の悪事の数々が暴露されて阿瑤の何もかもが信じられなくなっていたとは言え、
あの時目を開けていさえすれば、阿瑤が己を襲おうとしていたか否かは判って居た筈だ。
何故目を瞑ったまま刺したか・・・
曦臣は、己を襲おうとする阿瑤の姿を目にしたくなかったから。
現実を突きつけられたくなかったから。

死を悟った阿瑤が最期に「一緒に死んで下さい」と囁いて、曦臣がそれを受け容れた時、
曦臣は、またもや目を瞑ってしまう。
それはきっと、阿瑤の起こした「悪」に己も責任があると考えて、
死の道連れに己を望む阿瑤を見放す事が出来ずに、静かに己の運命を受け入れようとした
決意の表れだったのだろうけれど、もしあの時、死を受け入れた曦臣を見て、
満足そうに微笑んだ阿瑤の顔をしっかり目にしていたなら、
最期の力を振り絞って突き放した阿瑤の表情を目に出来ていたなら、
曦臣は、あれ程までに苦しむ事は無かったろう。

藍曦臣のテーマ曲「不由」の一節   

不欲遮眼 遮眼有因果
縱是愛恨天定奪

私は目を覆いたくはない
見通せぬのが因果
愛と憎しみが運命であったとしても

 藍曦臣テーマ曲「不由」

「目を覆いたくはない」そう言いながらも目を閉じてしまう。
その結果、何が起こったか。
曦臣は、独り寒室で琴を奏でながら、
己と対話し続けるのだろう。
問霊し続けるのだろう。

清く正しく強く優しく完璧に見える曦臣が、この癖から
推測させる弱さ、人間らしさが堪らなく愛しいと思う。