曦瑶

「陳情令」金光瑶と藍曦臣についての彼是

瑶琴寄恨生

以前twitterで金光瑶の剣「恨生」の文字が含まれる漢詩の一節
「瑶琴寄恨生」をあげておられる方がいて気になっていた。
唐代の女流詩人魚玄機の「寄飛卿」という詞だ。
魚玄機は、娼家に生まれ見目麗しく詩才に優れ、
金満家の妾になり、その後女道士となった。
けれど嫉妬から侍女を殺して死刑にされた人物だ。

 

「寄飛卿」魚玄機


階砌乱蛩鳴      
庭柯煙露清      
月中隣楽響      
楼上遠山明      
珍簟涼風着      
瑶琴寄恨生     
稽君懶書札      
底物慰秋情  

(意訳)
軒先の階段にこおろぎが鳴く
中庭には霧が煙のように立ちこめ
月明かりに照らされて音楽が響いている
遠くの山から織り込まれた草の涼しい風が吹寄せる
琴を抱くと貴方への恨みの心が生ずる
貴方はずっと便りを下さらないから
何を以て秋の情を慰めようか

 

森鴎外の小説「魚玄機」にも描かれているが、
幼少の頃から才気煥発で詩の道を究めていく女性が
男性によって性に目覚めさせられ、成熟の時を迎えるのだけれど、
男性の愛を信じられなくなって、
自分の侍女との仲を邪推?嫉妬して殺して仕舞う、
やがて罪が露見してあたら若い命を散らせて仕舞うそういう物語だった。


こじつけになるだろうけれど、
悪の心に蝕まれて破滅していった阿瑶を思わずにはいられない。
そして、「月」、「涼風」の文字から
もう一つの歌詞が浮かび上がって来る。
藍曦臣のキャラクターソング「不由」だ。

 

「不由」

清風入夜來 滌盡江湖興衰
只是過往人已不在
撫琴問明月 流歲添幾分感慨
抵不住世間百態

 

清風夜と共にさざめき 江湖の盛衰を拭い去る
ただ在りし者の姿はなし
琴を弾きて明月に問う
流れゆく歳月に思いを馳せながら
人の業は止められないのか


「不由」を聴いていると、
月琴を抱く阿瑶の姿が朧に浮かんで来るような気がするし、
窓辺で琴を弾く曦臣の姿が影法師に見えるようなそんな心地がする。